三河湾 魚便り

黒ムツ

black throat

令和四年三月号2021年5月より毎月1号、三河湾の旬をお届けします。

赤ムツやノドグロと聞けば、近年、高級魚として有名で人気の高いお魚。それと名前のよく似た黒ムツ。実は別の魚種に分類されています。赤ムツがホタルジャコ科に属するのに対して、黒ムツはムツ科に属します。見た目や名前は似ているのですが、やはり別の科に分類されるているのにはそれなりの理由があります。今回の「三河湾魚便り」は赤ムツとの比較もしながら黒ムツをご紹介いたします。

 

概要

三河湾は形原で揚がる黒ムツは魚体が800g〜1.5kgになる大きめのものを選んで仕入れています。たまに2kgを超えるような魚体の黒ムツを見かけますが、その際は即買いです。とても貴重でkg単価も高いのですが、そこは関係なく仕入れをします。赤ムツのように華やかな見た目ではありませんが、値段は4,000円/kg〜となり特大サイズともなれば、10,000円/kg ということも。赤ムツと同様に高級魚に分類されます。

 

ムツという言葉は「むつごい」から来ていると言われていて、その意味は「脂のノリが良い」ことを表します。赤ムツも黒ムツもムツと呼ばれるだけあり、脂がしっかり乗ったお魚です。しかし食べた時に感じる旨味が少し異なります。くどさを感じることなく、後味のキレが良いのが黒ムツの特徴です。口に残らない脂身と表現することができるかもしれません。赤ムツの脂たっぷりの旨味とはまた違った旨味を持つ黒ムツ。方向性としては似ているかもしれませんが、こうした小さな違いの中に、その魚の持つポテンシャルを感じていただけると思います。

家庭での食べ方

三河地方では一般的に少し小ぶりなものがスーパーにも並びます。比較的、足の早い魚であるため鮮度的に刺身は難しいかもしれませんが、鍋や煮付けに最適です。やはり三河では、甘辛く煮た煮付けが特に定番で、とろとろに溶けていく食感と旨味は最高の一言に尽きます。またこの脂の旨味をより一層引き立たせるために、意外かもしれませんがウイスキーと合わせて食べるというのもオススメです。ハイボールでもロックでもどんな飲み方にも合うような黒むつの煮付け。是非、一度お試しいただきたい食べ方です。

 

三篤でのご準備

すし人三篤では、抜群の鮮度のものを仕入れています。なので、家庭ではなかなか味わうことができない刺身でのご提供をしています。脂が多い魚は、酸化してしまうスピードが早いため、熟成には不向きとされています。なのでこの黒ムツはポテンシャルを活かすべく、1、2日ほど少し寝かすのみとしています。この独特の旨味をシンプルにわさび醤油と合わせて楽しんでいただければと思います。赤ムツは炙ることでそのポテンシャルを爆発的に高めることができますが、黒ムツはシンプルな刺身が最適だと考えます。

 

一般的に秋から冬にかけて美味しいと言われる黒ムツですが、三河地方では今がとても美味しい時期。一般的に認知度が高く人気の赤ムツに負けず劣らずの黒ムツ。お刺身で素材の味をそのまま楽しんでいただきたい贅沢な逸品です。

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