三河湾 魚便り

ワカメ

wakame

令和四年一月号2021年5月より毎月1号、三河湾の旬をお届けします。

新年明けましておめでとう御座います。

 

新年とは早春の訪れであり、三河湾でこの季節を告げるものと言えば意外かもしれませんがワカメです。1月、2月、3月に旬を迎え、今は新芽の時期。薄いワカメがこれからどんどん分厚くなっていきます。普段は料理を引き立てる脇役として使われることの多い食材ですが、今の時期のワカメはそれだけで立派なつまみとして主役を担うことができると考えています。今月の「三河湾魚便り」ではワカメを取り上げます。

 

日本人

ワカメは非常に栄養価の高いスーパーフードです。血圧を下げたり、腸内環境を整えたり。また抗酸化作用も強く、脂肪燃焼を促したりとその効能は枚挙に暇がありません。日本人にとっては毎日欠かさずに食卓に登場するお味噌汁の具となるのが定番ですが、他にも若竹煮やサラダ、付け合わせなど年中登場します。

古くは縄文時代の遺跡から土器と共にワカメが発掘されるほど、日本では塩分補給の役割として食されてきました。また、万葉集には「比多潟(ひたがた)の 磯のわかめの 立ち乱え 我をか待つなも 昨夜も今夜も(比多潟の磯の若海藻(わかめ)のように、思い乱れて私を待っているのだろうか。昨夜も今夜も。)」といった歌があるように、その揺れ動く様が男性が女性に歌を詠む時によく用いられる恋心の象徴的なものとして考えられています。日本人にとっていかに身近であり、長く愛されている食べ物であるか伺うことができます。

 

生のワカメは黒色をしています。見出しの写真を見ていただくのがわかりやすいですが、この黒いワカメが火をいれた途端に緑色に発色します。すし人三篤ではこの色鮮やかな変化も楽しんでいただきたいという思いから、目の前で昆布出汁を鍋で沸かし、しゃぶしゃぶにしていただきます。自家製のポン酢は濃口醤油とだいだいを合わせた名古屋の味。修業先のすし人酒井で先代から受け継がれている秘伝のポン酢を合わせます。まろやかな酸味が、しゃぶしゃぶにした生のワカメと相性が抜群で、その甘さを一層際立たせます。

 

この時期のワカメは非常に貴重です。2月になれば少しずつ分厚くなり食感も変わっていきます。今の新芽の状態は、繊細な香りと甘みをお楽しみいただけます。歯切れが心地よく、サッパリとポン酢と食する爽快感は春の縁起物としてもとても有り難いものだと感じています。身近な食材であるワカメにも背景には様々なストーリーがあり、それらを知ることでより味わいも深いものになるのではないでしょうか。本年も「三河湾魚便り」を通じて、三河地方の魅力を発信していきたいと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。

HOME