令和三年五月号2021年5月より毎月1号、三河湾の旬をお届けします。
ガゼとは?
赤ウニと言われると馴染みがあるかもしれませんが、三河湾で取れる「殻付きの赤ウニ」を限定してこの地域ではガゼと呼びます。他の地域では殻だけのことをガゼと呼んだり、それに似た様々な呼称があるそうです。
食べられる時期は短く5月から8月中旬まで。それもよりガゼをガゼらしく楽しむには鮮度が大事であるため、当日の朝に揚がったものを師崎港から直接送っていただきお客様にご提供しています。
ウニはとても繊細な食材で、時間が経つと形状が崩れ味も落ちてしまいます。ミョウバンという添加物を使用し形状を維持しようとすれば、ウニの本来の香りが妨げられてしまいます。このような理由から、ミョウバンを添加していないウニ本来の味と香りを楽しむためには漁港から近い場所で当日届くものを食べる必要があります。北海道であれば馬糞ウニがそれにあたり、この三河湾ではガゼがそれにあたります。空輸で運ばれるウニにはミョウバンが多少なり使われていることを踏まえると、一切添加物を使わないウニがいかに貴重だということが分かると思います。
味
ウニの味や香りは、ウニが食べている餌に由来します。北海道であれば昆布を餌に、三河湾ではアマモという海藻類を餌にします。アマモはあまり馴染みのない海藻ですが、昆布と比較して香りが素晴らしい一方で、旨味が少ない海藻です。その為、三河湾近郊では鮮度の高いウニを殻付きで食べることにより、海水の塩味で旨みを引き立たせながら食べるのがおすすめです。ガゼと言えば「殻付き赤ウニ」を指すということが、この地域の赤ウニの味や香りの特徴を表していると言えるかもしれません。旨味が少ない分このような食べ方が自然と地域に根付き、殻付きのものを限定してガゼと呼ぶまで親しまれ、貴重なものになったと考えられます。三篤では「海をそのまま味わう」ことができるよう、シンプルにつまみとしてガゼを提供しています。
ウニの楽しみ方
ウニは土地によってとても味や香りが異なります。赤ウニひとつとっても、九州、山口、淡路島等の産地によって味や香りが異なります。そしてそれに付随して食べ方や提供の仕方も変わってきます。逆手のウニと呼ばれる淡路島の赤ウニは高値で取引されることで有名です。九州の赤ウニもまったりとして濃厚な味わいが特徴です。それとはまた違った食べ方をするのが三河湾のガゼ。今の時期だと、色々な寿司屋で赤ウニが提供されますが、今回取り上げたガゼを食べられるのは三河湾近郊のお店だけ。地の利と言えるかもしれません。朝揚がってお店に届くときはまだ動いているほどの鮮度です。シンプルに割っただけのガゼを海水の塩味でまるごと楽しんでいただければと思います。