三河湾 魚便り

皮剥

filefish

令和三年十一月号2021年5月より毎月1号、三河湾の旬をお届けします。

三河湾地域では別名ギマと呼ばれ、その由来は銀の馬から来ているというほど、滑りを持った光沢のある質感と、どこか馬にも似た顔が特徴的な篠島で揚がるこのお魚。肌寒くなる秋の始まりから旬を迎え三河地域では広く一般的にソウルフードとして食べられるカワハギを今月の「三河湾魚便り」では取り上げたいと思います。

 

三河

三河地方ではこのカワハギが秋の宴会には欠かせないものでした。料亭で働いていた頃は、1日に200本をおろすこともあるほどで、1人1尾を煮付けにして提供していました。ツノが硬く、包丁が1日の作業でボロボロになってしまうほど、職人泣かせの魚でもあります。肝も一緒に丸ごと甘辛の醤油ベースで煮付けにすることで、身はフワフワになります。もともと身に旨味が強くあるわけではないため、この地方の醤油や味醂といった甘辛の調味料に合わせて調理されていました。この味が日本酒の燗との相性が抜群であることもあり、家庭での人気はもちろんのこと宴会では欠かせない一品として三河のソウルフードと呼ばれるほどになりました。料亭という業態自体が減少している現在もなお、スーパーで当たり前に並ぶほど、三河地方では人気の魚です。

 

名前に関する小咄

冒頭にギマと呼ぶ由来に関して記しましたが、このカワハギという名前の由来は皮を剥ぐというところから来ています。鮫肌のようなザラザラした分厚い皮は食べることができないため、うまく切れ込みを入れ、最後は手で分厚い皮を思いっきり剥がします。こんな仕込み方から名前が付けられるのもとてもユニークに感じます。また、この皮を剥いだ後の身は一転、真っ白で透明がかかったツルツルの身をしているのも特徴です。地方によってはこの身から由来するのでしょう、「ハゲ」だとか「まるハゲ」「本ハゲ」と呼ぶ地方まであると言うから驚きです。他にも様々な呼び名があるのもこのカワハギの魅力です。それだけ特徴のあるビジュアルと抜群の美味しさから人気が高いことが伺えます。

 

仕込み

話はだいぶそれましたが、すし人三篤での仕込みや提供方法を最後に書きたいと思います。まず、このお魚は身に味が強くあるわけではありません。刺身であればコリコリ、煮付けであればフワフワの食感を楽しみます。すし人三篤ではこの食感をより味わっていただくために採れたてのものを分厚めに切りつけをし、濃厚な肝を合わせてつまみとして提供しています。魚体の1/3ほどにパンパンに詰まった大きな肝は濃厚で、この肝がメインだと思わせるほどの味わいです。刺身の横に添えて出すのが一般的ですが、よりツマミとしてお酒との相性を引き出すために肝を濾した後、ポン酢などで味を調整してぶつ切りの身と絡めます。カワハギの身質と、クリーミーかつ臭みのない肝の特徴を最大限に活かしたツマミとしてこの時期の風物詩となっています。是非、この時期だけの肝和えを味わいにいらしてください。

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